Jのさらなる飛躍のために―その1 新たな顧客を
「近いうちに」などと言っておきながら、またしても更新が滞ってしまいました。ここらでぎゅっと褌を締め直して、前回のエントリで最後に記した「サッカー、Jリーグがマニアックなものになっているのではないか」という私が抱く懸念についての考察などを、数回のシリーズで書いてみたいと思う次第です。
第1回目の今日は、なぜ私が危機感を抱いているか、そのアウトラインをお話しします。
現在Jリーグでは、鬼武健二チェアマンの肝入りで「イレブンミリオンプロジェクト」を立ち上げ、観客動員目標を設定して、リーグと各クラブとが連携を取りつつ、各種の施策を実行している。その成果もあって、ここ数年Jリーグの入場者数は増え続け、08年シーズンはついに900万人の大台を突破した。J2でチーム数が増えている事情は加味しなければならないが、J1の平均入場者数も微増しているのを見ると、増加傾向にあることは間違いない。
ただし注目したいのは、1人あたりの「観戦頻度」も増えていること。Jリーグが毎年発表しているスタジアム観戦者調査によると、J1では2004年に10.2回、05年に10.8回、06年に11.5回と、はっきりと増加している。お得意さんが何度も足を運んでくれているから、延べ人数では増えているものの、「新規顧客」の呼び込みには苦戦している現状があるのだ。
それがなぜ問題になるのか。優良顧客がついて、その人たちがおカネを落としてくれるのであればいいではないか。…という意見もあるかもしれない。しかし、公共性の高いスポーツ興行という業態、しかもホームタウン制を掲げ、地域住民に愛され支えられ、地域を活性化する存在となることを求められているJリーグクラブが、一部の愛好者だけに支持される状況は健全ではない。
何より、Jリーグのクラブは、スポンサー抜きには成り立たない。プロ野球などと違って試合の開催頻度に限りのあるサッカークラブは、入場料収入だけでクラブを維持するのは不可能。テレビなどの放映権料収入も足しになる程度(それでも、リーグから分配される放映権料がなければ、運営がおぼつかないクラブがあることも事実。その辺の話は後ほど)。ユニフォームやスタジアムの看板掲出などの対価として、宣伝料というおカネをくださるスポンサーは、クラブにとって生命線だ。
当然スポンサー企業は、ロゴなどを露出させ観客らに周知を図ることで、企業としての認知度向上や商品の売上アップを目論む。周知の対象は、多ければ多いほどいい。しかし、その対象者であるJリーグの観戦者は、延べ人数こそ増加しても、個別の数では伸び悩んでいる――。広告媒体として、Jリーグクラブは魅力的な存在にはなり得ていないのではないか。そんな懸念を抱く。
入場料という直接的な収入を得るためにも、グッズ販売や売店での飲食物販売など二次的な収入を得るためにも、そしてスポンサーを維持・拡大するためにも。Jリーグクラブにとっては、スタジアムへの観客動員を増やすことが、収益増加の全てにつながる原点なのだ。ロイヤリティの高い優良顧客(=サポーター)を囲い込むのはもちろん、常に新規顧客を呼び込んで、そのうちの何割かが優良顧客として定着してくれる、というサイクルを確立したい。
ならば、いかにして新規顧客を呼び込むか。
効果的な方法として、マスメディアなどでの露出を図り、顧客予備軍にアピールすることが挙げられる。Jリーグに限らず、公共性の高いスポーツ事業は「マーケットシェア」に対して「マインドシェア」が非常に高い。契約選手やスタッフを含め、100人あまりの小所帯ながら、日本国民の大多数がその名前を知っている、そんな会社は一般にはあまりない。公共性の高さゆえに、メディアも取り上げてくれる。
Jリーグは、07年以来放映権をスカパー!に優先的に与えている。年間50億とも言われるリーグの放映権料収入を維持するためには、やむを得ない措置だったのはわかる。しかし、CS放送は契約が必要であり、顧客予備軍へのアピールという点では全く意味をなさない。ウェブと同様、プル型(ユーザが引っ張ってこないと情報を得られない)メディアであり、プッシュ型(興味のない人にも届けられる)メディアでマイナス分を補う必要がある。
すなわち、地上波のテレビや新聞、雑誌(サッカー専門誌以外)などの従来型マスメディアでの露出を積極的に図りたいところだ。しかし、その現状はあまりに物足りないと言わざるを得ない。
シーズン中でも、Jリーグの試合が開催された当日、夜のニュースでダイジェストが放映されるのは2、3試合程度。プロ野球全試合をダイジェストで見せる番組が多いのと比較すると、扱いの差に愕然とする。中には結果のみしか伝えない番組も多い。
スポーツ紙も同様だ。特にこの時期、サッカーも野球もシーズンオフだが、プロ野球選手の自主トレ風景がこと細かに伝えられるのに対し、Jリーガーの話題はクラブがリリースした移籍情報程度、選手個人の情報が伝えられることの、なんと少ないことか。
断っておくが、私は「野球偏重のメディアを糾弾」したいわけでは、全くない。昨年は、Jリーグ開催日の翌日のスポーツ紙1面を、石川遼くんやオグシオが飾ることも多かったと記憶する。こうなってしまった現状、93年~94年当時のJリーグバブルや、02年の日韓ワールドカップ開催時にあれほど注目を集めたサッカーなのに、それを維持できなかったこの現状を、サッカーに携わる者は反省すべきなのではないか、と言いたいのだ。
というわけで、初回は現状の再認識でした。続きは改めて、近日中に。
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コメント
私もおにぎりさんの言われる危機感を強く感じています。
ただ、たまにJの試合が地上波で放送されても、絶望的に低い視聴率。
視聴率への数字の評価は昔とは違うとはいえ、NHK教育の国体の中継みたいなものにも負けていたりしますからね。
スタジアムには人が来るのに。
野球も実は同じで、TV視聴率は急減してますが、スタジアムに行く人が減ったわけではない。
マスコミでの新規顧客開拓ってのがほんとうに難しくなってるなあ、と思います。
なので、おにぎりさんの「対策編」、興味深くお待ちしております
投稿: おかだ | 2009年1月15日 (木) 03時16分
冬ソナのころからですが、最近ブームを作るのは中高年の女性のような気がするんですよね。
ナントカ王子とかきみまろさんとか演歌ブームとか。
昨年のゴールデンタイム2位はNHKだったそうですし。
サッカーと中高年女性、この水と油とも言える二者をどう融合させていくか、が課題になるように思います。
ミノルとヤザーがヘキサゴンに出てくれればな〜。
投稿: むささび | 2009年1月16日 (金) 20時47分
おかだ様
プロ野球の視聴率が落ちているといわれますが、当たり前のことだと思うのですよ。
インターネットが出現し、携帯電話が普及して、世の中に流通する情報量が飛躍的に増加しました。こんな時代に、古き良き昭和のような「大衆」は存在しません。「巨人、大鵬、卵焼き」の時代とはわけが違うのです。
それでも(たまに放送されると)10%近い視聴率を取るプロ野球って、やはり強いコンテンツだと思いますね。
むささび様
おかだ様へのコメントにも書いたように、私は現代って「ブームの起こりにくい」状況にあると思うのです。
でも一方で、名前も顔も知らない人と情報を共有できたりする時代です。口コミの力はさらに強まっています。
おばさんの間でJのプレゼンスが高まれば、もともと弱いセグメントだけに、人気の底上げにつながるでしょうね。
投稿: おにぎり | 2009年1月16日 (金) 21時54分
わたしは「観客が増加傾向にある」という事実に対していまいちピンときませんでした。「新規顧客」の獲得に苦戦しているという本説を読んで、そう言われてみれば・・・っと思いました。
今年の元旦、私はレイソルの応援のために友人達と国立で決勝を見ました。そうしたら、うちの両親や友人の両親・兄弟も家でNHKを見て観戦していました。試合後、私は両親と初めてレイソルの試合の感想を言い合いました(笑)
メディアの力とは凄いと改めて感じています。
投稿: ぼーず | 2009年1月18日 (日) 22時42分